前回、「言葉の断捨離」というテーマで記事を執筆いたしました。予想以上に多くの方に反響をいただいたようで、ありがとうございます。
今回は続編として、日常の「言葉の使い方」をどのように意識したらいいのか、ひとつ具体的に取り上げてご紹介してみたいと思います。
「でも」という言葉が口ぐせになっていませんか?
普段、何気なく使う言葉。その中で便利な言葉はたくさんありますよね。そうした何気ない日常会話の中で日々使っている「でも」という言葉について、いくつかの角度から考えてみましょう。
まず、自分が普段「でも」という時、その後にどのような言葉が続いているかを、少し考えてみて下さい。
例えば、「そうですね。でも〜〜」とか、「それはわかります。でも〜〜」のように、否定形になっていたり、言い訳になってしまうような言葉が続くことが多いのではないでしょうか。
あるいは、自分には相手の言い分の正しさが分かっているのに、「でも」という言葉で自分を守ったりしている場合もあるかもしれません。
しかし、相手の話を受け入れた後に、それを打ち消す意味合いの文脈で「でも」という接続詞を使うと、その前に肯定した良い流れがストップして滞ったり、状況を受け入れて前進する力が弱まってしまうような感覚になるのではないかと思います。
私の身近な例で日々実感することで、こんなことがあります。
子どもたちと接していて、何かその子が気に入らないことがあると、「でも〜、でもでも〜〜〜!!」という言葉を連発されることがあります。しかも大体そういう場合は、「だからどうしたい、こうしたら良くなりそう」というような、具体的な改善策が提示されたり発展的な話が出てきたりする訳でもありません。
もちろん相手の心の中で感じている何かを汲み取って丁寧に交流することも大切なのですが、基本的に「でもでも」モードに入ると、感情エネルギーが鬱滞して何も前に進まなくなってしまうことがよくあります。
ただこれは、子どもだから、という例に限った話ではありません。普段の職場やプライベートな人間関係の中でも、「でもでも」が口ぐせになっている方の言動を見てみると、先ほどの例と同様に、前向きで主体性を持った明るいエネルギーに乏しいと感じ取っていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。
そうです。日常的に使う「でも」は大抵の場合、その前に肯定した文脈を反転させる言葉なので、どうしても全体のエネルギーが落ちてしまうのです。
そしてそれは結果的に、その人の意識のベクトルや、ひいては人生の方向性にまで作用していくことになるんですね。
否定形の言葉を “反転させて” 生かす方法とは?
とはいえ、「でも」という言葉が完全に悪いというわけではありません。
二つ目のポイントとして、「でも」という一見ネガティブに感じられる言葉を、逆に有効活用するにはどうしたら良いか?ということがあります。
そもそも「でも」という言葉自体は単に一つの接続詞でしかありませんので、「でも」自体が否定的でネガティブな言葉という訳ではないですよね。言い方を変えると、ここで大事なのは、
「でも」という言葉をどういう文脈でどういう意志のもとに使うか?
ということ。つまり、自分の意識の問題が関わってくるということが見えてくるのではないかと思います。
これは、言葉の持つ力の面白さの一つでもあります。
では具体的にどう生かすかといいますと...単純な話、先に否定的な言葉を持ってきた上で、その意味を反転させる文脈で、「でも」を使うようにする、という手法を使ってみればいいわけです。
例えば、「それは難しいと思います。でも〜〜」や、「そんなことは今まで誰もやったことはありません。でも〜〜」というような使い方ですね。最初に否定形で入るものの、その後に続く言葉は、不思議と前向きで主体性を持った明るい陽のエネルギーに変わっていく様子が、感じ取れるのではないでしょうか。
言葉と意識の相関性ということは様々に研究されていますが、なかでも「文脈のピリオドに何がくるか」ということが、その時に発した言葉が最終的にどう意識に作用するかという点で、大きな意味をもつのです。
話の最後に「でも、〜〜だから無理ですね。」と言えば、無理、という意識に作用しますし、「でも、〜〜だからやってみましょう!」というピリオドになれば、やってみよう、という意識に作用するのです。
ですから、「でも」という言葉を自分がどのような意志で、どのような文脈で、どのような意識の方向性で使うのかを客観視した上で有効活用するようにコントロールすることができれば、それだけで小さな好転が次々と起こるようになるでしょう。
「でも」をうまく使いこなせば、中庸の視点をもてるように
三つ目は、「客観視」ということにつながる話です。
たとえば正・反・合で有名な弁証法では、対立した二つの概念を統一するために、物事の良い面・悪い面を客観的に見ていくというプロセスを行なっていきます。その時に役に立つのが、「でも」「しかし」に象徴される、いわゆる否定形の言葉です。
自分の視点を「良し悪し」という二項対立の外の次元、中庸のニュートラルな状態に置いた上で、「でも、これはどうだろう」「しかし、そのさらに反対はどうだろう」というように、自分の考え方を客観的に捉え、検証して行く上でも、とても重要で効果的な思考プロセスになります。
私たちは往々にして、あの人は良い、とか、これは悪い出来事だ、というように視点を決めつけてしまいがちですが、物事はもともと単純な「良い・悪い」では決められません。視点をスイッチングしてみれば、まるで正反対の価値や評価や判断にもなりうるものは多々あるのです。
例えばポジティブ思考と言われるように、一般的には楽観的な考え方がいいと思われがちですが、そこには案外思わぬ無意識の落とし穴があったりするものです。考え方や思想がプラスの方向にばかり偏ってしまうと、その反作用で、プラスとは逆のエネルギーが何か別の形で動いたりすることがあります。
だからこそ、「でも」という否定形を自在に使うことで視点の偏りをなくし、冷静に物事を客観視する次元での視点に立つ、ということも大事になるのです。
そして、そういった意識の扱い方を繰り返していきますと、現象を捉える視点や現象を生み出す階層を徐々に上げていくことが自然と身についてきて、やがて良い・悪いという二項対立の思考法から抜けて、自ずと柔軟性をもった発想で物事を捉えたり自在に生きることが出来るようになります。
まとめ
今回は、「でも」という言葉を取り上げてみました。このように考えてみると、一般的に否定的と言われている言葉が悪いわけではないことがわかりますし、言葉の有効な活かし方や、言葉と意識の持つ力についての気づき等も、様々に広がっていきますね。
春は新しいことが始まる季節です。新しい環境やチャンスがやってくるなど、新しい人間関係が始まる時期でもあります。そんな時期だからこそ、一度、自分が普段使っている言葉の棚卸しをして、言葉によって新しいものを主体的にどんどん創造していける自分になっていきましょう。
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いかがでしたでしょうか?
一般的に「でも」、
それから「でも」に続く言葉は、
否定形の文脈になることが多いですが、
言葉の使い方次第で、
肯定的な文脈に変換することができる
ということがお分かりいただけたのでは
ないかと思います。
そして、ここで重要なポイントは
はなから
「否定的な言葉はいけない」
とネガティブに捉えるのではなく
文脈によっては、
自分自身や今起こっている物事を
冷静に見つめるための助けになったり
客観視をするのに役立つ、
ということです。
これは言葉に限らずですが、
物事を「良い・悪い」で捉えてしまうと
何より自分を追い詰めて
苦しくなってしまいますよね。
これは良い、これは悪い
と勝手に決めつけてジャッジすると、
一つの事象の解釈がそこで固定されて
しまって抜け道がないように思えるため、
その先に進めなくなってしまうのです。
さらに、別の角度から見たら
本当はあるかもしれない可能性の扉を
閉ざしてしまうことにもなりかねません。
だからこそ、
言葉の可能性、物事の解釈の仕方は
無限にあるということをまずは受け止めて、
否定的な物事にも光を当ててみることを
習慣にしていきたいですね。
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