その土地でとれた旬の食べものや、その土地の伝統食を食べることを、「身土不二(しんどふじ)」といいます。
「身土不二」とは、元々は仏教の用語。「身体とその土地は、二つにあらず、つまりそれらは切り離すことができない。身体と土地は一体である」という意味があります。
私は食べることを通じて、人の腸内の土と地球の土を豊かにするプラネタリーヘルスな食べ方・生き方を考える時、まさに「身土不二」のことを思い出します。
自分の暮らしている地域の土で育った作物を食べることで、私たちは土地の栄養をいただくことができるのです。
その土地でできた作物を口に運び、胃腸で消化し、それを腸内細菌が分解して、腸の土が作られていく。そんな理想的な循環が生まれていきます。
そうして無理のない自然のサイクルによってできた作物には、土地を豊かにする土壌由来の土壌菌が「億単位」の量で、大変豊富に含まれています。
土壌菌が活躍していれば、土は栄養豊かになります。そんな土壌菌のサポートによって、植物の根から栄養が運ばれ、作物が栄養豊富になっていくのです。
発酵食品は土壌菌が生み出した
ただ、このように言うと、「土壌菌がたくさん含まれている食物は食べたくない。作物に菌がついているなんて汚い!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも、そんな風に思わないでください。
元を辿れば、発酵食品の起源は、土壌菌によって葡萄が発酵したワイン、そしてりんごが発酵したシードルなどに由来します。
また海外と同様に、ここ日本における発酵の歴史も古く、土壌に暮らす乳酸菌による発酵で漬物ができたり、枯草菌の仲間の納豆菌で納豆ができたりするなど、発酵文化は昔から盛んな土地柄でした。
こうした土壌菌は、加熱にも胃酸にも強く、生きて腸まで届きやすい種類の菌です。そして腸内の土を腸内細菌と協力しながら、栄養が豊かな腐葉土にしてくれるはたらきを担ってくれています。
ではその逆で、地球の土、腸の土で、土壌菌や腸内細菌が活躍できないと、どうなるのでしょう?
人も植物も栄養が乏しくなって、文字通り「枯れて」しまいます。
そう。私たちが活力に溢れ、元気に生きていくためには、食べ物からいただく土壌菌や腸内細菌が必要であり、その土壌菌を豊かに育てる土と微生物の働きが元気であることが大事なのです。
ですから「腸活」が大事なのですが、さらに土の話に繋げてみると、身近な土地の土も豊かであることが大事なのですね。
旬のものは人を季節に“最適化”する
さらに、旬のものを食べることにも意味があります。
旬のものは栄養価が豊富で美味しいのはもちろんですが、メリットはそれだけに留まりません。
その土地の気候風土の情報を持った旬の植物や食物は、それ自体を季節に最適化すると同時に、それを食べる人もその季節に最適化してくれます。
例えば、冬が旬の根菜類は、身体を温める陽性の食べ物です。そのため冬に根菜類を食べると体が温まります。
春が旬の苦味がある野菜は、少量食べることで解毒を助け、冬に溜め込んだものを出す働きをしてくれます。
夏が旬のトマトやキュウリなどの瓜科のものは、カリウムが多く利尿作用で身体の熱をとる食べ物です。太陽の紫外線から身を守るために野菜の中で作られるファイトケミカルは、人が食べることで紫外線の害を抑えてくれます。
秋には、デンプン質が多い芋類やキノコ類が旬を迎えます。夏に消耗した体力を回復し、冬に備えてエネルギーを体内に蓄えるためには欠かせません。
キノコ類に含まれるβグルカンなどの多糖類やビタミンDは、来る冬に向けて必要な免疫力を高めてくれるのです。
このように考えると、旬のものをその季節にいただくことが、いかに「理にかなっている」かが見えてくるのではないでしょうか。
植物・食物は、気候風土の情報をもっている?
さらに、私たちが生きていく上で欠かせない水には「情報が保持」されます。
水には、情報を保持する第4相のゲル状の水(Ezウォーター)の状態があることが、ワシントン州立大学のジェラール・ポラック博士の研究でも明らかになりました。
植物や動物、人の細胞の中の水、それから、全身の血管の壁と血液の境界面は、情報を保持するゲル状の水になっている、ということもわかっています。
「ありがとう」という言葉で水の結晶が美しくなり、「ばかやろう」という言葉で醜く崩れてしまう現象がありますが、それは決して迷信などではなく、ポラック博士によって科学的にも証明されているのです。
つまり、水を含んでいる植物・食物の中にもまた同様に、その土地の気候風土の情報が水を媒介して保持されている、ということですね。
身体中の水は、水分子が手を繋いだネットワークのような状態になっており、情報は一瞬でこの全身の水ネットワークに伝達されます。
そして自分が暮らす土地の旬の作物を食べ、身体の水に触れることで、その情報が身体中に伝達され、保持されることになるのです。
だからこそその地域の水、その地域の土で育った旬のものを食べることはとても重要であると考えています。
例えば、毎朝コーンフレークに牛乳をかけて食べることは今、日本でも珍しくない朝食の風景なのかもしれません。しかし、一度立ち止まってよく考えてみてほしいのです。
全くかけ離れたアメリカの畑でとれたトウモロコシに、工場で南米の砂糖をまぶして加工し、日本に輸送したコーンフレークに、全国の牛乳を混ぜて加工した牛乳をかけて食べる。
これは、身体が混乱してしまう行為になるのではないでしょうか?
地元のお米を地元の水で炊き、地元の野菜を使った味噌汁を食べる。
そのほうが身体が食物から情報を受け取りやすくなることは、「身土不二」の観点からもいえることだと思います。
季節外の野菜は地球環境にも負荷が大きい
今スーパーに行けば、トマト、キュウリ、ナスといった夏野菜が真冬でも店頭に並んでいる様子が目に入りますね。
これは「ほとんどの野菜が季節感なくいつでも手に入る」ということです。
ハウス栽培で育てれば真冬でも夏野菜を育てることができますが、栄養価は乏しく、おそらく旬の美味しさは感じにくいかと思います。
さらに環境のことを考えると、ハウスや温室栽培は多くのエネルギーを使い環境負荷が大きいと言われているように、持続不可能な農法だと指摘されていますね。
「家庭生活のライフサイクルエネルギー」(社団法人資源協会)によると、きゅうり1kgの生産に必要なエネルギーは、夏秋採りの露地栽培の場合、996kcal。
冬と春のハウス加温栽培の場合、5,054kcalで、旬の時期に育てることと比べて約5倍のエネルギーを消費すると言われています。
その他の野菜も、旬に露地栽培されたものと季節外にハウスや温室で栽培されたものを比べると、数倍〜10倍のエネルギーが必要とされています。
このように考えると、本来必要のないエネルギーが余分に使われていることが自ずと見えてくるのではないでしょうか。
季節に身体を最適化するためにも、地球環境を守るためにも、「身土不二」を意識した季節の旬のものを選んでみましょう。
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いかがでしたでしょうか。
身近で採れる食材をなるべく旬なうちに
食べるのがいい
と頭ではわかっていても、
現実的にはハードルが高くて
なかなか行動に結びつかない、
という方もいらっしゃると思います。
編集部のスタッフである私も、その一人
でした。
しかし、後半で触れていただいている
「植物・食物にはその土地の気候風土の
情報が保持される」というくだりを読ん
で、ハッとさせられました。
土壌菌が豊富な大地で育ったものをいた
だくことで、その土地の情報が体に入っ
て記憶され、エネルギーが高まっていく
イメージが湧いてきたからです。
とはいえ、これも
まだまだ頭で考えている範囲…
だからこそ、これは良い情報!
とピンときたら、
まずは小さなことでもできることから
一歩踏み出してみるのは、
とても大事なことだと思っています。
豊穣な大地で育った野菜は、新鮮で甘く
てびっくりするほど美味しいですよね!
まずはそういう食材を選ぶところから
始めてみるのがいいかもしれません。
こんな時こそ五感をフルに使って
「美味しい!」の感動を積み重ねていって
大地との関係を取り戻していきましょう。
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