――ふとまにの里では様々な作物を育てていると思うのですが、最近は旬のものとして、柿を収穫されたのですよね。まずはそれぞれの柿の特徴について、簡単に教えてください。
(御所柿について)
御所柿は、元々、奈良県御所(ごせ)市の原産の柿で、奈良から全国に伝わったと言われています。ここ里吉もその一つで、昔栽培していたものは将軍家や天皇家にも献上されていた歴史があることがわかっています。(昔、この地は里吉御所と呼ばれていた)特別な柿なんですね。一つひとつは小ぶりですが、食感に独特の粘り気があって、すごく甘いというのが特徴です。一説によると、甘柿のルーツとも言われていて、その甘さは「天然の羊羹」と呼ばれているほどです。
(富有柿について)
一方の富有柿は、後発組――御所柿よりも比較的新しい完全甘柿の一種で、原産は岐阜県と言われています。品種としては御所柿のルーツが組み込まれているそうですが、見た目も味わいも御所柿とは異なり、大きくてさっぱりしているのが特徴です。それから食感もサクサクしています。
このようにそれぞれに見た目、味わい、食感が異なるので、好き好きはあると思いますが、どちらもとても美味しいです!
――ふとまにの里では、山梨県の特産品でもある柿を毎年育てていますよね。育てるところから収穫まで色々と大変なこともあるかと思うのですが、直近のお話で、今年収穫してみての感想を教えてください。
そうですね。実は、御所柿の収穫のタイミングはすごく難しいと言われているんですけど…そのことを改めて実感しました。御所柿は他の柿と違って、収穫の見極め時の判断がなかなか難しいところがあるんですよ。
ふつうの甘柿は一般的に、実が赤く色づき始めた頃に「そろそろかな」と思って収穫すると思うんです。でも御所柿の場合はそうはいかなくて…。収穫が少しでも早いと、まだ熟し切れていなくて若干の渋みが残ってしまったり。逆に少し遅くなると、柔らかくなって熟れ過ぎてしまって商品として出せなくなってしまったり。そのあたりが本当に微妙で(笑)。なので「今が収穫時」というタイミングを見極めるときの判断が難しかったということが、まずありますね。
ただ、御所柿を育てるにあたって改めて色々なことを学んでいます。農業は自然相手なので、人間の思い通りにいかないことも多々あって、なかなか奥が深い世界だなぁと。でもその分、自然と対話しながら、試行錯誤しながら嬉しい発見もあるのでその分の喜びもあります。七澤代表も生前おっしゃっていたように「自然から学ぶ」とはまさにこのことだと、日々実感しています。
――「自然から学ぶ」は、まさにそうなのでしょうね。では、ふとまにの里を育てていく上で、今課題に感じていることを教えていただけますか?
そうですね。色々と苦労することもあるのですが、まず大事なこととして、「いかに水を美しくしていくか」ということがあると思います。
ふとまにの里には現在池があるのですが、ここの水は用水路から引いてきていることもあって、もともと水質的にはあまり純度が高くないんです。加えて、ふとまにの里の構造上どうしても水の流れが全体に行き渡らず、滞留しやすくなるといった課題もあります。
ただ、白川(※)は「水」を大切にしているということもあるので、どのように水質を改善して、ふとまにの里にふさわしい水にしていくか?ということは、これから重要なポイントになってくると思います。
※古神道の叡智をお伝えしている白川学館では、「水」を司る神を宇宙のはじまり(起点)と捉え、そこから全ての創造が始まるとされています。そのため全ての源である「水」をとても大切に考えており、水の品質の改善のために、このふとまにの里をメインフィールドに、様々な水の実験なども行なっています。
それからもう一つ、「土壌をどう改善するか」という課題もありますね。もともとの土が粘土質なので、農作物を育てるためにふさわしい土に変えていかなければなりません。
ただ、こうした課題もある中で、農業用ロゴストロンを使って発信をしたり適切な場所にカグツチを埋めてみるなど、デジタルとアナログの両面から水質や土壌の改善ができることをしていて、これは当初からずっと実践し続けています。正解はないのでもちろん試行錯誤ではありますが、それも含めて「自然と向き合う」ことだと思っています。トライ&エラーの連続ですが、せっかくなのでそのプロセスも楽しみながら育てていけたらなと思います。
――とはいえ、はじめは何もない更地のところからのスタートですものね。当初からどんどん風景が変わって、びっくりしています。具体的にはどんな変化があったのでしょう?
そうですね。そう言われてみると、最初の頃と比べて鳥が増えたような気がします。とくに夏場は、鷺(さぎ)や鴨などを見かけることが、すごく増えました。これは私たちにとっても嬉しい変化です。
また、そうした鳥たちの効果もあるのかもしれませんが、ブラックバスやザリガニといった、いわゆる外来種と呼ばれる生物がだいぶ減ったような気がします。一般的に外来種は繁殖力が強い上にまわりの虫も食べてしまったりするのですが…。そういう意味では生態系のバランスを崩してしまう要因にもなり得るので、ちょっと困りものだったりするのですが。でも発信(※)のおかげか、周りに鳥が増えたことで外来種が減ったので、そういう意味では自然の環境が少しずつでも整ってきているのかなと思います。わずかでもこういう手応えが感じられる瞬間はやはり嬉しいですね。
※データムグループでは、言霊を宇宙の最小単位のエネルギーとした上で「ロゴストロン」という装置で、日々情報発信を行なっています。詳しくはこちらへ
――以前見せていただいた鷺のお写真、本当に綺麗でした。ちなみに竹内さんがふとまにの里でとくに印象に残っている風景や好きな時間帯はありますか?
個人的に一番美しいと思う時間帯は、しんと静まり返った早朝です。
空気が澄んでいてちょうど朝日が昇ってくる頃なので、ふとまにの里のやわらかく優しい雰囲気が一番よく出る時間帯だなぁと思います。
お天気がいいとここから富士山もきれいに見えますし、寒い冬の時期になると植物に夜露が出てくる様子や池から水蒸気が上ってきて太陽の光を浴びてキラリと光る様子など、幻想的な光景が一面に広がります。朝はついカメラに収めたくなるような感動的な瞬間が、本当にたくさんありますね。
――ふとまにの里では色々な作物を育てていると思いますが、中でも「お米」は白川においても重要な作物だと思います。お米を育てる上で大切にしていることや心がけている点などがあれば、教えてください。
米づくりは、春のお田植えに始まり、稲刈り、脱穀に至るまで様々な工程がありますが、「みんなで育てている」という気持ちを大切にしていきたい、という思いがいつもあります。
実際にお米を育てるのはなかなか大変で、ボランティアの方も含めて本当にたくさんの方々のご協力をいただきながら育てているので。日本には昔から「共同体で皆で協力して一つのものを共につくり上げる」という文化があると思うので、そういう意味でも米づくりは日本文化の原点に立ち返るような貴重な体験になると思います。ですので、これからもその気持ちを忘れずに、皆で一緒に米づくりを続けていけたらと思っています。
それから米は、単純に自分たちが食べるもの、というだけでなく、白川では「新嘗祭に献饌する」=(神様に一年の五穀豊穣のお礼を感謝をもって捧げる)、さらにそれによって来年の予祝をするという重要な意味もあります。日本にはそういった米文化、稲作の歴史が古代から脈々と受け継がれているので、農作業や祭祀を含めて一連のプロセスを皆で協力して行うという意識は、これからも大事にしていきたいですね。
――ふとまにの里といえば、「チャイルド・アーツ・アカデミー」も定期的に行なっていると思うのですが、全体の概要と最近印象的だった活動についてお話しいただけますか?
チャイルド・アーツ・アカデミーは、ふとまにの里をメインフィールドに、子どもたちに日本の文化や伝統行事というものを自然の体験を通して学んでいただく、という活動になります。
たとえば先日は、「新嘗祭を学ぶ」というテーマでワークショップを行ったんですよ。
ふとまにの里で採れた柿、大根、かぶ、落花生などを使って「神様へのお供え物をつくる」というワークをしたのですが、ご参加いただいたお子さんたちには「どのように献饌物を配置したら、神様が喜ぶのか?」ということを各々考えてもらって。色々とユニークなアイデアが飛び交いましたが、みんな本当に一生懸命考えてくれたおかげで、とても有意義な時間になりました。もちろん、お祓いや鎮魂といったことも、毎回みんなで一緒に行っています。
子どもたちが参加できるワークショップというのは色々あると思うのですが、チャイルド・アーツ・アカデミーは白川、「おみち」の教えが根底にある、ということがやはり大きいと思います。日本の伝統や文化、そしてその土台に自然観があるということを学ぶ時に、その背景に何があるのか?ということを知ることで、見える世界は全然違ってくると思うので。そういった日本文化の凝縮された部分を、子どもの頃から自然の体験を通して学べるのはとても貴重だと思います。
――子どもから大人まで、貴重な経験がいっぱいできる場所なのですね。では最後の質問になります。ふとまにの里で今後やっていきたいこと、目指していきたい理想の姿などビジョンがありましたら、教えてください。
ふとまにの里の元々のコンセプトに「日本の原風景である里山をつくる」ということがあるので、そこに向かって、生態系が多様で自然豊かな場所になるように進化させていきたいです。
先ほど、外来種の生物がやってくるとお伝えしましたが、そういうものを遠ざけたり闘ったりするのではなく、外来種が在来種と共存できるような場にしていくことが、目下の課題ですね。
それから、これはまだ先の話になりますが、ゆくゆくは一般開放をして地域の方たちが集まってこれるような、皆に愛されるような「憩いの場」として活用していけたらいいなと思います。それを実現するためにはまだ取り組むべき課題もたくさんありますが、里山を育てていく過程も楽しみながら、頑張っていきたいと思います。
――ありがとうございました!
――――
柿の収穫から、ふとまにの里での取り組み、
これまでの変化の様子など、
竹内さんから伺った様々なエピソード、
いかがでしたでしょうか。
お話の中でとくに心に響いたのは、
「自然相手だからこそ正解はなく、
日々、自然と対話しながら育てています」
というお言葉でした。
自然とともに生きるということは、
太陽や土、水からの
恵みをいただくばかりでなく、
同時に人間の都合ーー私たちの思い通りに
いかないことも全て丸ごと受け入れる、
ということでもあります。
そうした中でも、
古神道の白川の教えをベースに
「里山の懐かしい風景や生態系を取り戻そう」
という思いのもとに
日々進化しているふとまにの里は、
まさに古神道の叡智を学ぶための
壮大な実験場と言えるかもしれません。
最初は何もなかった「ゼロ」からのスタートで
今や、たくさんの収穫物がなり、
私たちや動物たちの憩いの場でありながら
子どもたちの学びのフィールドとなった
この場所は、
これからも人と自然との関係、
様々な結びの中で
きっと新たな顔を見せてくれるでしょう。
ぜひ今後の展開も楽しみにして
いただけたら嬉しく思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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