産霊(むすび)の働きを持つ日本語にみる、無限の創造性とは?

こんにちは。
essence編集部です。


新海誠監督の新作アニメーション
『すずめの戸締り』が好評ですね!

 

そんな中で、過去作との違いや特徴など
ホットなトピックとしてニュースで
トレンド入りしており、その流れの中で
『君の名は。』も再び注目を集めています。

 

そこで今回は、映画『君の名は。』に
登場する重要なキーワード「産霊(むすひ)」
について、南さんが執筆して下さいました。

 

この記事を執筆いただく中で、

 

「もともと存在があったから、
名前が付けられたのか。

もしくは名付けたから、存在が現れたのか」

 

という、意味深な言葉をささやいていた
南さん。

 

では、心にふっとわき起こった感情は、
どうなのでしょうか?

 

感情が先にあったからそれにまつわる
感情表現の言葉が生まれたのか。

あるいは、

名付けたから感情が生まれたのか?

 

そんな深い禅問答が繰り広げられるよう
テーマをお届けします!

 

ぜひお楽しみください。

〜〜〜〜〜〜〜〜

著者プロフィール:

南那実

幼少期より、映画、小説、漫画、絵本、文学、児童文学などに多く触れる経験をもつ。その影響から、日本語独自の表現方法や時代背景に思いに興味を持ち、そうした土台が日本文化をつくり上げていることに、ある時ふと気づく。

そして今も、日本の独特な表現方法や日本語の奥深さを探求し続けている。

日本語の情緒語の数は、なんと数千以上も存在する

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自国の言葉である「日本語を知る」ということは、自分のアイデンティティを再確認し、存在を認知するということに繋がります。

 

たとえば、日本語には心の機微を表現する「情緒語」と呼ばれるものがありますが、すべて合わせると、なんとその数は、数千以上にも及ぶといわれています。

 

ここで一つ、わかりやすい例をあげてみましょう。

 

感情表現を表す言葉として「喜怒哀楽」という言葉がありますが、こちらだと「喜び」「怒り」「哀しみ」「楽しみ」のたったの4種類、かなり大雑把な分け方になりますね。

 

しかし、この一つひとつをもっと細かく見ていくと、たとえば「喜」であれば、嬉しい・ありがたい・充実感がある・満たされる、「怒」であれば、「腹が立つ」・「むしゃくしゃする」・「不愉快」といったように、同じ種類の感情でも、微妙に心境が異なることが見えてくるのではないでしょうか。

 

また仮に、「喜び」「怒り」「哀しみ」「楽しみ」の4つの言葉しか知らなかったとしたら、それ以外の複雑な感情に気づけないかもしれません。

 

このように考えると、もともと感情があったから言葉が生まれたのか?あるいは、言葉があったから、ある感情に特定の名前をつけたから(=名付けたから)それが立ち現れたのか?という、「卵が先か、鶏が先か」の議論になってしまうのですが。

 

とにかく日本語は、その分類がとても細やかで繊細な表現に満ちている、ということがよく見えてくるのではないでしょうか。

言葉と言葉のあいだには“産霊”のはたらきがある!?

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しかし、日本語の深みはそれだけにとどまりません。

 

日本語には、今挙げたような情緒語だけでなく、「わたし」や「あなた」を指す言葉や数え方の単位、さらには天気や空を表す言葉などもたくさんあるのです!

 

そんな言葉と出会うたびに、その種類の多さに驚かされ、日本語のしくみそのものに深い感動を覚えています。

私 ・ 僕 ・ ウチ・ 俺 ・ 自分・ 儂 ・ 拙者 ・ 小生・ それがし ・ おいら ・ 我輩 ・ 余 ・ 当方 ・ 我 ・ わらわ ・ おら ・ あっし ・ こちとら

 

あなた・君・そちら・お宅・お前・お主・貴君・自分・汝・其方・御身・貴様・おのれ・御許・お客様・先生・先輩・師匠・小僧・小娘

 

本・枚・羽・台・柱・個・杯・棟・俵・組・丁・対・面・床・口・編・隻・通・首・行・瓶・足・基・張・枝・振・反

 

青空、晴天、時雨、雨間、淡雪、春風、暁、天の海、寒天、秋陰、曙天、天穹、俄日和、碧天、行き合いの空、東雲

 

ざっとご覧になって、どのように感じられたでしょうか。

こうして見ると「自分」を表す言葉だけでも、かなりたくさんの種類があることがわかりますね。

 

そして、それぞれの言葉には、前の言葉を受けるかたちで、それにふさわしい言葉が続いていくことを考えると、その先には膨大な言葉の組み合わせの可能性が出てくるわけです。

たとえばちょっとかしこまったビジネスシーンで、「私」、または「自分が勤務している会社」を「当方」と表現することがありますが、「当方」を普段の私と同じ感覚で使ってしまうと、ちょっと大変なことになってしまいます...。

 

たとえば「当方は、本日とても有意義な時間を過ごさせていただきました」という表現に違和感を持つ方は少ないと思いますが、

 

「当方、今めっちゃ楽しい!」と言われたら、さすがに、「エッ!?」と一瞬躊躇してしまうのではないでしょうか(笑)。


これはまさに、「間抜け(マヌケ)」とも言われるような、ちょっとクスッと笑ってしまうようなシーンですね。

(「間抜け」という言葉は、拍子抜けする、調子が崩れるという意味を表す言葉です。日本は「間(ま・あいだ)」の文化というように、お茶をはじめその他芸事の世界でも、まさに「間」を極めることがその道を極めると言われているため、それが抜けてしまうということは、やはり調子が狂う、拍子抜けするといった、ある種のおかしみに通ずるのでしょう)

 

そう考えると、言葉にも適材適所があって、ふさわしい収まりどころがあるーー言葉の組み合わせにも最適な流れやかたちというのが存在する、ということが自ずと見えてくるのではないかと思います。   

そして、これこそまさに言葉に宿る本質的な力(言霊)と、産霊のおはたらきによる、「産霊」(結び)のなせる技なのかもしれません。

  

そしてそのような言葉の組み合わせの妙によって自分にしっくりくる言葉に出会った時、人は感情が揺さぶられたり、行動へと駆り立てられるのでしょう。


きっと皆さまにもそんな経験があると思います。


「この言葉に出会ったから、人生が変わってしまった!」というような特別な体験です。

 

そんな自分にしっくりくる言葉、心の奥までまっすぐに届き、じんわりと深く沁みわたる言葉との出会いこそ最高の宝物で、人生そのものを動かすほどのすごい力をもっていると思うのです。

 

それは「言霊」の力、あるいは言葉と言葉を結びつける「産霊」のおはたらきによるもの、と言っても良いでしょう。

Blue vivid image of globe. Globalization concept. Elements of this image are furnished by NASA-2


それからもう一つ。

 

そうした「人の行動を駆り立てる何か」の奥には、言葉と情緒の関係性が潜んでいることも、ここで見逃せないポイントです。

 

なぜなら、ある情緒語によって心が動かされることーーつまり「心にスイッチが入る」状態になるため、行動というアクションに繋がるからです。



これはいわば、情緒語が発動、発火した瞬間です。


そう考えてみると、「自分にしっくりくる言葉」や「心に響く言葉」に人生の中でどれだけ出会えるのか。それから、無意識的にも意識的にも、そういった言葉をシャワーのように浴び続けていくことが、いかに重要であるか?ということが見えてくるでしょう。

 

こうして無意識の領域で、「言葉の書き換え」が頻繁に起きることによって、現実がつくられていきます。

言葉には無数の組み合わせがあるとお伝えしましたが、それをたえず書き換え、アップデートしていくことによって、その言葉に沿った方向性に現実がつくられていく、ということです。


まさに言葉の組み合わせは、無限大。

 

だからこそ、その一つひとつの結び(産霊)を見つめながら、ふさわしい言葉に結び直していくことが自分が思い描く人生を創造していく上で、とても大事なことだと思う今日この頃です。

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人の感情を司ると言われている情緒語が、
細かく分けると数千以上にも及ぶと知って
びっくりされた方も多いのでは?

 

さらに、その一つひとつに最適な結びの
あり方があることを思う時、改めて

「すごい言語を使いこなしているなぁ」

と感心される方もいることでしょう。

 

しかも私たちはそういったことを、
特別な場合を除いて、
ほぼ「無意識に」行なっているのです!

 

そして、そんなふうに言葉と言葉を結び
合わせてくれるものの正体が、ある種

「産霊のおはたらき」でもある、

ということです。


日頃何気なく言葉を使っていると、
そのすごいはたらきになかなか気づけない
かもしれませんが、

ときに無意識を意識にのぼらせてみることで
目に見えないエネルギーの豊かな力を

感じ取ってみてはいかがでしょうか。

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