幾重にも折り重なる日本語

こんにちは。
essence編集部です。

 

普段、何気なく使っている言葉。

 

そのような言葉を単なる道具として、
またはコミュニケーションツールとして
捉えるだけだと、言葉の本当の奥深さには
たどり着けないかもしれません。

 

しかし、古くから続いてきた和歌の文化や
著名な文学作品などに触れてみると、
その言葉の奥深さや独自の魅力に
ハッと
させられる瞬間があります。

 

(最近だと、新海誠監督の話題作から
そのことを感じ取る方も
いらっしゃるかもしれません)

 

そんな感動のひととき、日本語のもつ
本当の奥深さに触れた瞬間がある時、
南さんにも訪れたそう。

 

そこで今回は、そんな日本語ならではの
言葉の豊かさやユニークな構造について、
さらに言霊学まで広げて、南さんが内に
秘めた想いを届けてくださいました。


ちなみに南さんは、
essence初登場となりますが

日本語の深い魅力をよく知る一人として、
編集部がリスペクトする人物。

 

そんな南さんの思いのこもった文章、
ぜひ最後までお楽しみください!

〜〜〜〜〜〜〜〜

著者プロフィール:

南那実

幼少期より、映画、小説、漫画、絵本、文学、児童文学などに多く触れる経験をもつ。その影響から、日本語独自の表現方法や時代背景に思いに興味を持ち、そうした土台が日本文化をつくり上げていることに、ある時ふと気づく。

そして今も、日本の独特な表現方法や日本語の奥深さを探求し続けている。

多彩な魅力のある日本語

日本語とは面白いもので、知れば知るほど発見があり、面白味が増していきます。

たとえば、仮名文字を一回ずつ使った誦文(ずもん)。

 

・いろは歌

色は匂へど 散りぬるを

我が世誰ぞ 常ならむ

有為の奥山 今日越えて

浅き夢見じ 酔ひもせず


・鳥啼歌(とりなく)歌

鳥啼く声す 夢覚ませ

見よ明け渡る 東(ひんかし)を

空色栄えて 沖つ辺に

帆舟群れゐぬ 靄の中


(その他「大為爾(たゐに)の歌」や「天地(あめつち)の詞」など


「いろは歌」はとても有名なので、ご存知の方も多いでしょう。

このように、多数の仮名をパズルのように組み合わせて文章を作ることができるという面もあれば、たった一文字・二文字だけで、複数の意味を持つ面もあります。

 

う=兎、鵜、卯

あわ=阿波、粟、泡

 

回文(前から読んでも、後ろから読んでも、同じ文章)で言葉遊びも出来ますし、文章も作れます。

 

宝船回文

 なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな

(長き夜の 遠の睡ねむりの 皆目醒めざめ 波乗り船の 音の良きかな)

 

「名前」での分類は、とても細やかな印象を受けます。

例えば、色の和名や、月の満ち欠けの名前などです。

浅葱色、山吹色、菖蒲色、鴇色、若菜色、桔梗色…

参考:『和の名前と色見本』
https://irononamae.web.fc2.com/wa/

 

新月、繊月、三日月、若月、蛾眉、上弦の月…

 

他にも、オノマトペでは、「しーん」など、音なき音まで表現されていたり、同じ日本語でも地域ごとに言い方の違う方言があったりと、色々と日本語に関する面白さは尽きることがありません。


知れば知るほど深くて、新しい発見に出会えます。

日本語の魅力の極み!言霊学に出会った時の忘れられない感動

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その中でも私が、「すごい!これはとてもユニーク。他のどこにもない学問だ!」と深く心を揺さぶられたのが、言霊学に出会った時のことです。

 

なぜなら言霊学では、日本語五十音の一音一音が父韻と母音の結合によって成っているということを学問として研究していたからです。

 

そしてこれこそ、日本語ならではの大きな特徴だというのです。

 

たとえば、「か」は「K」という父韻と、「A」という母音に分けられます。

同じように「す」は「S」という父韻と「U」という母音に分けられる、といった具合に。

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そう考えると、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類があることも日本語ならではの特徴ですよね。

 

臨機応変に、しかも柔軟に数字や英文字もうまく取り入れて、縦書きにも横書きにもできるーーこれこそが、日本語ならではの自在性であり、面白みであると感じます。


まるで西洋、東洋と古今東西の言葉の叡智とその結晶が、一音一音に畳み込まれているような感覚さえします。


さらに。日本語一音が母なる大地の音=母音と、父なる宇宙の音=父韻の結びによって生まれたと考えると、日本語は宇宙言語ともいえるわけで、地球と宇宙が共に音を奏でている、大調和の宇宙のハーモニー、と捉え方もできます。


それから日本には、柿本人麻呂が詠んだ有名な歌で、万葉集に収められている一句、

 

「しきしまの大和の国は 言霊の幸(さき)わう国ぞ ま幸(さき)くありこそ」

 

という歌があります。

 

これは「日本という国は、言葉が持つ力=言霊によって幸せが広がり繁栄していく国で、これからもこの国が平安でありますように」という意味を表しています。

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「言霊の幸ふ国」
と云われるだけあり、歴史には言葉(言霊)の大切さがすでに7世紀に歌として詠まれ、和歌という美しい文化として受け継がれてきたことが本当に素晴らしいと感じています。

(※皇室では、毎年年始になると「歌会始」の重要行事がありますが、これも言葉を大切にしている日本ならではの文化的特徴が表れているものと言えると思います)


このように私たちの身近にあって当たり前のように存在している言葉ですが、こうして見てみると、日本語はユニークであるばかりでなく深みもありつつ、様々な要素が幾層にも織り重ねられているように感じられるのではないでしょうか。

 

日本語は、先人たちの優れた発明とも言われていますが、そう考えるとこの美しい言葉を残してくれた人々に心からの敬意と感謝の気持ちが自然と湧いてきます。


そして、この言葉をこれからも大切にしていきたいと思うのです。

ーーーー

 

いかがでしたでしょうか。


南さんが幼い頃から親しんできた日本語と
その成り立ちを追求していく中で
「言霊学」に出会い、言葉の奥深さと
面白みに開眼していった様子。

 

その深い感動と喜びが言葉の一つひとつ
から伝わってくるようでした。

 

そういえば今、新海誠監督の最新作で
『すずめの戸締り』が大ヒットしていますね!

 

根強い新海ファンに感想を聞くと、


「これまでも素晴らしかったけれど、
過去最高の傑作。すごく感動した!」

という声をよく耳にします。

 

そんなヒットの背景に思いを巡らせた時、

理由の一つに日本文化に秘められた
土地の「鎮め」(鎮魂)の儀式や、
遠津御祖神、産土、常世など、

「鎮め」に紐づく大事なキーワードが
散りばめられているからなのでは?


と、ふと感じました。

 

さらに、主人公「すずめ」の名前も
言霊学で重要な「す」から始まっていすし

「岩戸すずめ」は、
天岩戸やアメノウズメに由来する、

とも言われています。


遠津御祖神、産土、常世などは
普段は聞き慣れない言葉なので、
聞き逃してしまうこともあるかもしれません。

 

しかし
スペクタクルなシーンで登場するため、
やはり観客の心に深く残って、

 

「何だろう?どんな意味だろう?」

 

と興味を掻き立てられるのでしょう。

 

そしてこれらは実は、言霊学的な観点
からも非常に面白く、深くリンクする
とても重要な日本語ばかりなのです!

 

というわけで、
つい後段が長くなってしまいましたが...。

 

今は日本語の深みに触れるには、
うってつけの時期かもしれません。

 

話題の映画からでも、和歌でも、
きっかけはなんでも良いと思います。

 

ぜひ興味を持ったところから、好奇心の
扉を開けてみてはいかがでしょうか。

 

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