前回の記事では、免疫には、素早い先制攻撃をしかける「自然免疫」と、的確にターゲットを攻撃し記憶する「獲得免疫」があることをお伝えしました。
自然免疫はターゲットを絞ることはできないものの、まず最初に感染を食い止めるために不可欠です。
自然免疫がしっかりと働き感染を防ぐことができれば、獲得免疫は出る幕もありません。
新型コロナウイルス感染症では、「ウイルスに対する抗体を作る働きが弱い」ということが指摘されています。抗体は、獲得免疫が働き、作られるものです。
実は、自然免疫がしっかりと働いていれば、抗体を作る獲得免疫が出動するまでもなく、自然免疫が感染を食い止めてくれるため、と考えられています。
自然免疫にしっかりと働いてもらうことは、感染予防に不可欠です。
自然免疫部隊の中でも、注目したいのが「NK細胞/ナチュラルキラー細胞」です。
NK細胞(「エヌケー細胞」と読む)は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞に対する免疫に不可欠なものだから。つまり全身をパトロールしながら、これらの細胞を見つけ次第、排除する働きがあるのです。
台湾からの報告では、新型コロナウイルスに感染した細胞を排除する速度には、NK細胞が関与しており、ウイルスをより素早く身体から排除した患者には、特定のNK細胞が多く存在したことが明らかになっています。
また、NK細胞はウイルスの排除スピードだけでなく、感染症の重症度にも関与している可能性があるとしています。
※Hsieh et al. (2021) NK cell receptor and ligand composition influences the clearance of SARS-CoV-2.
ストレスは万病の元と言われますが、免疫にとっても嬉しいものではないわけです。
免疫システムは、自律神経の支配を受けています。ストレスがかかり交感神経が活発になり、ストレスホルモンと呼ばれる副腎皮質ホルモン・コルチゾールが分泌されると、NK細胞の働きが抑制されます。
コロナ禍で、外出自粛や接触制限、マスク着用、黙食など、ストレスを感じる状況がずいぶん長引いてしまいました。
免疫機能を保ちたいのであれば、ストレスリリースを上手にすることが非常に重要です。
1)笑う
ストレスリリースに最も速攻で効く最大の妙薬は、笑うことです。
自発的な笑いが起こると、まずは自律神経のうちの交感神経が活発になり、その回復期に交感神経の働きが低下して、副交感神経の働きが活発になります。
ストレスホルモンである副腎皮質ホルモン・コルチゾールの分泌が低下し、継続的な抗ストレス効果が得られます。
※『人間科学研究』文教大学人間科学部 第 29 号 (2007)
ある研究では、元々NK細胞活性が低い人や標準的な人に笑ってもらうと、笑った後に活性が上昇する傾向があることが分かっています。
その効果は、免疫療法剤の注射よりも即効性があったという報告もあります。さらに、元々活性が高い人は、適正化される傾向にあるようです。
※心身医学34:565-571(1994)
笑うことは、いつでもどこでも誰にでもできます。そして、お金もかかりません。
笑うことで、一瞬でストレスモードからリラックスモードになり、NK細胞活性も高まります。さらに、人間関係も円滑になり、物事がうまく運びます。
まさに、「笑う門には福来たる」となるのです。
2)触れ合う
ストレスホルモン・コルチゾールの分泌を抑制する働きがあるのが、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンです。
オキシトシンは、子宮や乳腺に働くホルモンの一種で、女性が出産したり、授乳したりするときに分泌されます。さらに、お母さんと赤ちゃんをはじめとして、人と人の愛着を形成します。
オキシトシンの分泌が十分であれば、ストレス状況にも強く、心が安定します。
このオキシトシンは、スキンシップで分泌が高まることが知られています。皮膚と皮膚の触れ合いにより、安心感を得ることで、オキシトシンが分泌され、その代わりにストレスホルモン・コルチゾールが低下します。
もしこれがうまく分泌されないと、ストレスを感じやすく、幸福度が低下しやすいだけでなく、心身の病気にもなりやすくなります。
オキシトシンの分泌が十分であれば、免疫機能も向上します。さらにNK細胞を活性化したり、傷口を癒し、組織が再生するのを促進する働きもあります。
夫婦や恋人同士、家族での触れ合いはとても大切です。もし、身近に触れ合える人がいなければ、ゆったりしたオイルマッサージを受けるのも良いですね。
人だけでなく、猫や犬などのペットでも良いですし、肌触りの良い衣類に身を包んだり、ふわふわしたぬいぐるみを触ったりすることでも、オキシトシンは分泌されます。
3)腸内環境を整える
さらに、腸内環境もNK細胞の働きに関係します。
腸内環境が悪化して炎症が起きると、身体にとってストレスになります。
腸管にはたくさんの常在細菌が暮らしていますし、食べ物を通して、外界からさまざまな刺激がやってきます。ですから、腸管には、体を守るためにたくさんの免疫細胞が集まっています。
腸内環境を整えることは、免疫機能の向上に不可欠です。特に、乳酸菌にはNK細胞を直接刺激して活性化する作用があります。
生きて腸まで届く種類であるL.カゼイ・シロタ株など、いくつかの種類に、その作用が確認されています。
※F. Nagao, et.al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 64, p2706-2708 (2000)
乳酸菌以外にも、腸内環境を整えるシンバイオティクス食品を日常的に食べることが大切です。
乳酸菌などの有用菌による発酵食品プロバイオティクスとさまざまな種類の食物繊維やオリゴ糖などの腸内細菌のエサとなるプレバイオティクスを合わせて、シンバイオティクス食品と言います。
免疫の中でも、自然免疫は、本来備わっている免疫のポテンシャルです。そして、日常生活で少し意識をすることで、NK細胞の活性を高めることができます。
逆に、ストレスは簡単に免疫機能を弱めますから、ストレス状況下の今こそ、意識して免疫を低下させないように心がけることが大切です。
とはいえその方法は、今回ご紹介させていただいた1)〜3)の方法で、日常生活の基本を守ればできることで、決して難しいものではありません。
ぜひ、今日から実践してみてくださいね。
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いかがでしたでしょうか。
現在流行中の感染症から身を守る
ためには、獲得免疫の働きによって
抗体を作り出す以前に、
まずは「自然免疫」がしっかりと働く
状態をつくることが大事、だという
ことが、よくお分かりいただけたの
ではないでしょうか?
とはいえ、なかなか人とリアルに
会えない状態やマスク生活で呼吸が
思うようにできないと、予想以上に
心身にストレスがかかって
しまうもの...。
ただそうした中でも、ストレスを上手く
リリースすることで、自然免疫に
しっかり働いてもらう状況を作り出す
ことが健康を守る上で必須であると、
おっしゃいます。
ぜひ今回ご紹介いただいた、
・笑うこと
・触れ合うこと
・腸内環境を整えること
の3つを心がけて、日常生活の中で
自分の身を守り健やかに生きて
いける術を身につけていきましょう。
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