そうめんといえば、
ご先祖様をお迎えするお盆の時期に
仏壇にお供えをしたり食するものとしても
おなじみの存在ですね。
ナスを牛に、キュウリを馬に見立てた
「精霊馬」と合わせて、そうめんがお供え
されている光景を、一度は目にされたことが
あるのではないでしょうか。
そもそもなぜ、お盆にそうめんが
登場するようになったのでしょうか?
この風習の由来については諸説あるようですが、
主には次の4つの意味や願いが込められているようです。
1、 ご先祖様がお帰りになる時に荷物を背負うために結ぶ「紐」
2、 ご先祖様がお帰りになる時に精霊馬に乗る時の「手綱」
3、 疫病の予防を願う意味
4、 七夕に因んで「針仕事が上達するように」と願う意味
それでは、一つ一つ見ていきましょう。
まず1と2については、
ご存知の方も多いかもしれません。
ご先祖様がお盆に家に帰ってこられて
家族と共に過ごし、お盆最後の日、
送り火とともにまたあの世に
お戻りになる時、
「たくさんの美味しいお料理やお土産を
ちゃんと持ち帰れますように」
という願いから、
荷物を括るための紐として意味が
あるのだそうです。
もう一つは精霊馬に乗る時の「手綱」です。
紐はたくさんの荷物が途中で落ちないようにしっかりと結ぶため、
もう一つの手綱は、ご先祖様がお帰りになる時に
牛馬をうまく操るためのもの。
紐と手綱はどちらも「長いもの」です。
昔の人々はおそらく「そうめん」を
これらに見立てたのでしょう。
「お盆には長いものを食べる」
といわれますが、
これは、そうめんを食べる風習から
派生したものなのかもしれませんね。
さて続いて、3つ目の「疫病の予防」。
こちらは、暑い夏にそうめんを食べること
で熱病にかからなくなるという言い伝えに
由来しているそうです。
ちなみに平安時代に
宮中で行われていた七夕の行事でも
「熱病除け」としてそうめんがお供えされていた、
という記録もあるのだとか。
そこで、
ひょっとして、そうめんは七夕にも関係があるのでは?
と思って探ってみたところ、
4つ目の由来にたどり着くことができました。
以前、こちらの記事で、
7月7日「七夕」に作りたい七夕飾り! 願いを叶える短冊の書き方のコツ
https://essence.datumhouse.jp/tips-to-write-your-wishes-for-tanabata
をご紹介しました。
七夕は、
中国の乞巧奠(きっこうでん)に由来があり、
「乙女が機織りなどの手芸の上達を願う日」
として始まった行事が
日本の宮中に伝わったことについて触れていますが、
その由来ともつながりがあった、
ということです。
つまり、かつては
「機織りなどの針仕事の上達を願う日」
として行われていた七夕祭りにおいて、
長い「糸」に見立てられたそうめんが、
針仕事の上達を願うための縁起物として
飾られるようになった、ということです。
七夕はお盆の時期と近かったこともあり、
盆棚に備えられるようになったのかもしれません。
このように、お盆にそうめんを食べるよう
になった由来は諸説ありますが、
「喜びを細く長く」という意味で、
結婚式などのお祝いの席などでも
親しまれていることから、
暗に(さりげなく)二重の意味を含ませな
がら、文化や風習の中にうまく溶け込んで
いて、「日本らしさ」を感じますね。
さて、このように様々な由来のある
そうめんですが、
今でも昔ながらの伝統製法を守りながら、
これを作り続けている土地があります。
それが、そうめん発祥の地といわれている
三輪(奈良県桜井市)。
雄大な三輪山を御神体とし、
日本最古の神社と言われている大神神社を擁する
風光明媚なこの地では、
昔から「手延べそうめん」が有名で、
今でもその伝統製法を守りながら、
そうめんが作られているのだそうです。
ここでは詳しい製法については割愛するとして、
手延べそうめんの何がすごいのか!?というと、
一本一本の麺が、
「らせん状」になっていることなのです!
そうめんは一見して、真っ直ぐの細い麺に見えますが、
伝統製法を守って作り続けているところのものは、
よく見ると「らせん状のねじれ構造」でできているんですね。
拡大して見ると、
まるで神社などに祀られている注連縄(しめ縄)を
想起させるもの。
ここに、日本文化に息づく「型の継承」、
さらに、一つ一つのかたちに込められた意味
を感じてしまうのは、私だけではないでしょう。
そして、さらに調べてみたところ、
らせんの中はなんと
「空洞」になっている、ということも判明しました!
もちろんこうした技法は、
すべての製法に共通するわけではありません。
とはいえ、
今でも昔ながらの製法にこだわり、
驚くほど手の込んだ工程ながらも大切に、
その技を長年守り続けている場所があることに
日本文化の継承の力と美を感じます。
さて、よく考えてみれば
日本には「らせん」をはじめ円の形をしたものや、
丸い輪を描いて回るものがとても多いことに
気づくのではないでしょうか?
例えば、先ほど挙げた「注連縄」もそうですし、
他にも夏越の大祓の時期に神社に飾られている
「茅の輪くぐり」、
「相撲の土俵」などは有名ですが、
直近のお盆というところでいうと、
この時期恒例の「盆踊り」は、
手で輪を、円を描いて踊る独自の舞踏ですよね。
考え始めると連想ゲームは止まりませんが・・・
こうした例はまだまだ他にもたくさんあります。
そういえば、
私たちの命のモトとも言えるDNAも、
父親と母親から受け継いだ染色体が対に、
つまり「二重らせん」で、できていることを
ふと思い出しました。
この二重らせんは、
命をつなぐものとして、
人類始まって以来、先祖代々受け継がれてきたもの。
ぜひ、お盆の時期には
暑い時にぴったりのおそうめんを味わいながら、
命を繋いでくださったご先祖様に
思いを馳せる時間にしてみてはいかがでしょうか。
――――
いかがでしたでしょうか。
お盆の時期によく食べられている「そうめん」ですが、
その由来を探っていくと、
日本文化の「型」の継承にもつながるお話が
見えてきました。
何気ない日常や暮らしの中に
すっかり馴染んでいるから
当たり前になってしまって気づかないようなことも
その起源にはひょっとしたら
「すごいものや深いもの」や「本質的なこと」が
潜んでいるのかもしれません。
ぜひ、お盆の時期は
そんな日本文化の粋を感じながら、
ご先祖様への思いを馳せる時間にしたいですね。
https://essence.datumhouse.jp/tohokamiemitame_ancestors