内海さん:
前回、石原さんには、叶いやすい人は「ものごとを直線で考えない」傾向があって、それが「ことほぎ」にも繋がる、というお話をいただきました。
この他に、「ことほぎ」を考える上で大事なポイントがあれば、ぜひお聞かせいただけますか。
石原さん:
やはりそれは、「響き合い」というところだと思います。
内海さん:
響き合い、ですか。もう少し詳しくお話しいただけますか。
石原さん:
響き合いは、言葉がどう響き合うか?ということですね。
言葉でいうと「ことたま」、あるいは「ことだま」。
漢字でいうと、「言霊(げんれい)」ということになりますが、究極はそれらが響き合っている状態が理想といいますかね。
内海さん:
言葉の扱いというと、まさにdatum groupの研究の最たる部分ですね。
私も初めて出会った時、非常にシンプルで精緻でありながら、実践的でもあるので、凄いなと思ったところです。
言霊は「ことたま/ことだま」とも言われていますが、「げんれい」というと、もう一段深い概念の説明体系があるのですよね。
石原さんにぜひ、この「言霊(げんれい)」と「言霊(ことだま)」との違いをお伺いしたいです。
石原さん:
はい。「ことだま」という言葉も素晴らしい言葉なんですけども、ダジャレのように言ったら、ダマになっているというのは、もうエネルギーとしては「粗い」と言いますかね。
だから、一般的には「ありがとう」というのは「良いことだまなんだよ」とか「ついてる」というのは「良いことだまなんだよ」と言われていますけども。
言葉になって一つの塊になってしまっている時は、もう一つの粗雑なエネルギーになっているということですね。
でも、そのもう一つ手前のことに思いを馳せてみると、目には見えないけれどもそこにはまた、別のエネルギーが存在しているんですね。それは人を良い形で幸せにしてくれるような、そういった、言わば何かこう化学でいうと触媒みたいな存在が確かに存在しているんですね。
ただ、たとえばこれとこれがくっついて別の金属になると、その触媒はパッと消えてしまって、存在がなくなってしまったように思える。
それが、言霊(げんれい)ですね。
見えないからこそ、言霊という世界は何千年も見過ごされてきて、人々はダマになった世界にずっとフォーカスしてしまっているところがあったわけです。「ありがとう」と言っても、その通りにならない背景には、そういう理由があるんです。
「ありがとうを100万回言ったら運がよくなる」と言われて、実際に言ってみてもなかなか、ということがあると思いますが。
それがそういう世界に繋がるのかな、と感じています。
内海さん:
「ことほぎ」に敢えて引っかけて言うとすれば、ダマになったものを解すわけですね。
石原さん:
まさに、おっしゃる通りですね。
datumgroupの、datumも音の最小単位、情報の最小単位って言い方をしましたけども、それを一回ほぐしていくという。
ほぐしていくと、最初は大きな塊であったとしても、レゴのパーツのようになりますよね(笑)。レゴのパーツでお城になっているけど、ほぐすとまた車を作ったり、機関車にできたり、ジェット機に出来たりとかっていう別の形に作り変えることができますよね。
内海さん:
人間の体も心もそうですもんね。自分の癖を一回ほぐさないと、始まらないですから。
石原さん:
ですね。武道、あるいはお華やお茶を一つの決まった型とか作法がありますけど、堅苦しいものではなく本当は一度、今までの自分の癖を一回解いてしまうことが大事だと思うんですね。
正しい理解がないままに型を身につけたとしても、途中で難しいな、堅苦しいな、ということで嫌になってしまうこともあると思うんですけど、それを全部解いて、0(ゼロ)にして、また自由に組み替えていくっていうことが本当は大事なんですよね。
そのための知恵が、日本の伝統にはある、ということなんです。
内海さん:
そうですよね。
しかも、その型に一回はめられるというふうに、どうしても思ってしまうのですが、そこには実は深い知恵があるということですね。
何故その型を大事にしているのか?ということがある種の原理原則で、そこを掴んだ方が体にしろ、心にしろ、この原理原則を掴んで使った方がいいよ、ということで型を伝えていると思うんです。
石原さん:
本当にそうですね。
内海さん:
ことだまではなく、言霊(げんれい)においても、その原理原則に相当するものがあると。
石原さん:
そうです。まさにダマをほぐすことによって、本当はみんなが言霊を使って発揮したいことをより早くスムーズにできるようになる、ということですよね。
ダマになればなるほど、時間のある世界に入っていくんですよ。
だからたとえば、大きな塊になればなるほど、工事現場で解体する場合もそうだと思うのですが、大きな建物になればなるほど壊すのも時間がかかる、みたいなところと同じなんですね。
それがもっと細かい世界になると、とくに今はAmazonなんかも巨大企業になれたのはシームレスだから、摩擦がない。配送のロジの商品をお客さんに届けるスピードも極端に速い。
つまり「どれくらい時間を越えていけるか?」というところが重要なポイントで、ダマを超えれば超えるほど、霊になればなるほど、時間のない世界に入っていくということです。
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いかがでしたでしょうか?
日本は、昔から「言霊(ことだま)」の国と言われていて、
『万葉集』には、
「しきしまの大和の国は 言霊の幸(さき)わう国ぞ ま幸(さき)くありこそ」
という歌人の柿本人麻呂の詠んだ有名な歌があります。
とはいえ、言霊の真髄は深く、難解な部分もあるがゆえに、これまで公にはなかなか明かされてこなかったのでしょう。
しかし、今回の石原さんのお話で、言霊(ことだま)には一歩深い世界があること、またそれが「げんれい」という目に見えない世界であることが、触りの部分だけでもお分かりいただけたのではないでしょうか。
次回も、より深い世界のお話に入っていきますので、引き続きぜひお楽しみに。
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