▲七澤喜和(ななさわ きわ)
Mafora estate(株) 代表取締役
山梨県甲府市を中心に、不動産管理や古民家リノベーション事業をはじめ、
地域の活性化につながる農業、イベント、コミュニティ作り、食品開発に取り組む。
http://www.mafora.estate/index.html
この羊羹は、甲府では採れない
デーツという南国の果物の実を使っています。
先日、ようやく完成いたしまして、
皆さんにお披露目させていただきました。
まずは近しい方々に試していただいたのですが、とても好評で!
たくさんの喜びのお声を頂戴して、
私も心からホッとしております。
デーツはもともと南国が原産の果物ですので、
冬季は氷点下まで冷え込む甲府の地で栽培するのは、
あまり適していないんですね。
ただ甲府でも一部、
稀にデーツの栽培をしているところがあります。
その一つが甲府の私の叔父の家で、
昔、中庭にデーツの樹が一本植えられていたんですね。
当時は南国の樹木を少し植えて
中庭を眺めるというスタイルが
全国的に流行っていました。
叔父の家の近所の造園業の方から、
デーツの樹を譲り受けたのが始まりだったと思います。
デーツの実を叔父が食べた時に、
甘くて杏のような味わいで、
美味しい果物だなぁと思ったそうなんです。
それを聞いて、
最初は私もココナッツかヤシの実なのかなぁ
と思っていたのですけれども、
それよりももっと小ぶりの実だったので、
なんだろう?と思っていて。
それが後になって、デーツの実だということがわかったんです。
早速デーツのことを調べてみたらとても体にいい、
ヘルシーな果物だということがわかりました。
そこで、デーツを使って日本古来の伝統のお菓子、
羊羹をつくってみたらどうでしょう、と発案しました。
私自身もデーツが好きですし、
羊羹も昔から大好きなお菓子だったので、
好きなもの同士を組み合わせたら
すごく美味しいものになるだろうとワクワクしまして。
ぜひ作りましょう!ということになって、
このプロジェクトがスタートしたんです。
羊羹といいますと、
今のお子さんたちのお口に入る機会は
少ないと思いますので、
最初は「珍しいな」と興味をもって
手にとっていただけたらいいな、と思いました。
デーツの羊羹の開発にあたっては、
創業192年の松林軒さんという
老舗の和菓子屋さんをお尋ねいたしました。
こちらは店主がとても素朴な方で、
本当にお子さん思いの、
素敵なお父様でいらっしゃるんですね。
そこでお願いする時に、
「子どもたちに本当によいものを食べてもらいたい。
それから健康面だけでなく、
日本の伝統のお菓子・羊羹というものの文化と
その魅力も一緒に、
これから多くの方に伝えていきたい」
という私たちの思いをお伝えしたところ、
是非一緒にやりましょう!
とご快諾いただきまして。
そのおかげもあって、
この羊羹をつくるができました。
もっとも工夫した点としては、
羊羹の甘味に関して、
砂糖を極限まで
減らしたということでしょうか。
デーツはもともと甘みがある果実ですので、
その本来の甘さを生かすかたちで、
ほんのりと、自然の甘みが特徴の味わいに
仕上げることができました。
デーツはもともと温暖な地域、
南国の果実なんですね。
たとえば中東のイスラエル地方は
デーツの産地としても有名ですけれども、
実はこの地域では、
いわゆるイスラムの伝統的行事・ラマダーンの後に
食される甘味としても、非常にポピュラーな存在なんです。
ラマダーンの期間中は、
皆さんもご存知のように断食をするわけですけれども、
そのラマダーンが明けた時に、
生のものを摂取すると体によくないと、
一般には言われていまして。
ただ、断食明けはやはり体も栄養を補給したいと、
体は甘味を求めるわけですけれども、
その一方で、急激な甘味の補給は
体に負担がかかるということがあります。
ただ、そういう中でもデーツは優秀で、
断食後の弱っている体の状態を元に戻す、
“ミラクルなパワー”があると言われているんですね。
実際にイスラエルにいくと、寺院の礼拝堂には、
ふつうにデーツが置かれていることもあるそうなんです。
どんな人がいらしても
「ご自由にお召し上がりください」と、書かれてるそうで。
つまり、それだけ体によい果実、
“スーパーフルーツ”ということなんですね。
なおかつ、イスラムの神様にも受け入れている
食物でもあるということで、
現地の人々にとっては、
大変身近で親しまれている、
なくてはならないフルーツだということを
直接伺ったこともあります。
こういったことも含めて、
日本の伝統文化と
世界の伝統文化の融合という意味でも
非常に良いご縁であり、
文化と食との素晴らしい出会いなのではないかと、
私も嬉しく思っております。
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いかがでしたか?
食べる方の健康面はもちろん、
日本と世界の伝統文化の融合が果たされていたなんてとっても奥深いですね。
次回は、「日二度羊羹」の開発秘話とネーミングに込められた想いに迫ります!
ぜひ後編もご覧ください。